ホノルル ペストの火 1900年チャイナタウン炎上事件
生活の医療社 2021年12月刊行
タイトル:ホノルル ペストの火 1900年チャイナタウン炎上事件
ジェイムズ・C・モア 著 / 大脇幸志郎 訳
ソフトカバー(でも、かがり!!)|四六判|モノクロ|352ページ
定価:2,000円+税
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火のおかげで、ホノルルのチャイナタウンからペストはなくなった。火のおかげで、家も、金も仕事も生活も、チャイナタウンそのものも、丸ごと焼けてなくなった。
1899年、ハワイのホノルルをペストが襲った。チャイナタウンと呼ばれる、中国や日本からの移民が形成したスラム街が流行の中心地となった。三人の医師がペストに立ち向かい、ハワイ全土に及ぶ絶対的権限を与えられて大胆な公衆衛生政策を遂行していった。
三人の医師はきわめて優秀だった。当時最先端の細菌学を活用しただけでなく、過熱する世論を抑制し、現場の声に耳を傾け、何よりもハワイの伝統文化に対する深い敬意を持っていた。
しかし三人が汚染された建物の焼き払いという策を打ったとき、火は思いがけない突風のため燃え広がり、チャイナタウンのほぼ全域が焼け落ちた。
これは、一方では公衆衛生政策の勝利の歴史である。しかし同時に、人種差別と帝国主義に強く影響された悲劇の記録でもある。
当時の新聞や議事録、オーラルヒストリーなどの博捜に基づく圧倒的ディテールによって、歴史・政治的背景と複雑に絡み合う思惑と理想と偶然が再生される。
目次
プロローグ
1章 一八九〇年代のペストの世界的流行
2章 ハワイの「既存政府」
3章 ペスト菌の到来
4章 政府のペストファイター
5章 隔離
6章 十二月の討論と「悲しいクリスマスプレゼント」
7章 火を使う判断
8章 公衆衛生政策と「偉大な医師の会議」
9章 火で戦う
10章 チャイナタウン炎上
11章 収容所
12章 三人組はまだ奮闘を続ける
13章 残敵掃討の不満
14章 その後
訳者あとがき
ジェイムズ・C・モア(ジェイムズ・シー・モア)(著/文)
オレゴン大学総合文化校歴史学特別栄誉教授、社会学フィリップ・H・ナイト記念教授。1965年イェール大学で学士号取得。1969年スタンフォード大学で博士号取得。1992年からオレゴン大学歴史学部所属。研究分野はアメリカの社会政策の歴史、特に南北戦争およびその後のリコンストラクションについて、またアメリカにおける医療社会学。歴史についての多数の著書のほか、医学誌への寄稿もある。本書”Plague and Fire”で2005年オレゴン図書賞受賞。
大脇幸志郎(オオワキコウシロウ)(翻訳)
1983 年、大阪府に生まれる。東京大学医学部卒業。出版社勤務、医療情報サイトのニュース編集長を経て医師となる。首都圏のクリニックで高齢者の訪問診療業務に携わっている。
著書には『「健康」から生活をまもる 最新医学と12 の迷信』(生活の医療社)、『運動・減塩はいますぐやめるに限る!』(さくら舎)、『医者にまかせてはいけない』(エクスナレッジ)、訳書にはペトル・シュクラバーネク著『健康禍 人間的医学の終焉と強制的健康主義の台頭』(生活の医療社)、ヴィナイヤク・プラサード著『悪いがん治療 誤った政策とエビデンスがどのようにがん患者を痛めつけるか』(晶文社)がある。