【新刊】いずれくる死にそなえない

生活の医療社 2021年12月刊行

タイトル:いずれくる死にそなえない
名郷直樹著


ソフトカバー|四六判|モノクロ|288ページ
定価:1,800円+税
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本書は、普段の診察で人と生を相手にする医師が、誰にでも訪れる死を始点に定め、医学と自身の臨床を見つめ直す「自省録」だ。

— どこまでも健康、どこまでも長寿を重視す るのは無力というより不可能である。ある時期に限って実現できるに過ぎない。どこまでもというのは不可能だ。死を避けることはできない。死を避けるのは不可能だが、避けなければ少なくとも無力ではない。死んでいく中で、何かできることがあるはずだ。自分自身の無力感も、人が死んでしまうから無力なのではなく、死ぬことを避けようとするから無力なのである。[本文より]

僕らに必要なのは「下り坂の哲学」だ。

日本の高齢者人口は世界一、寝たきりも認知症もすぐそこにある我が事だ。なのに、やれ筋トレだ脳トレだと「健康な老い」という無理ゲーにはまって死ぬまで安らげない。僕らに必要なのは「下り坂の哲学」だ。 EBMの大家である名郷直樹さんが、そんな僕らに「安楽寝たきり」から「ことほがれる死」へという道を指し示してくれた。老いを楽しみ死をことほごう、これは僕らの時代の人間賛歌です。 ――高木俊介(精神科医)

●目次
はじめに
1章 健康欲望から死の不安へ
2章 死について――まず電車の話で
3章 死について――死を待つものたち
4章 医療は高齢者に何を提供しているか――加齢と健康、そして死
5章 「寝たきり欲望支援」から「安楽寝たきり」へ
6章 死を避けない社会
終章 死をことほぐ社会


著者=名郷直樹
1961年、愛知県に生まれる。自治医科大学卒業。愛知県作手村国民健康保険診療所に12年間勤務。へき地医療や研修医教育を中心に活動し、2011年6月に西国分寺でクリニックを開業。地域家庭医療に従事し、20年以上にわたりEBM(エビデンスに基づく医療)を実践する。著書に『EBM実践ワークブック―よりよい治療をめざして』(南江堂)、『気負わず毎日使えるEBM超実践法』(金原出版)『「健康第一」は間違っている』(筑摩選書)、『65歳からは検診・薬をやめるに限る! 』(さくら舎)など。

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